今回のテーマは得意技についてです。
自分の得意技について、中学や高校で剣道を始めて1年~1年半ぐらいの人に向けて書いてみました。
自分の得意技について、いろいろ模索している方の参考になれば幸いです。
目次
剣道1年未満の初心者の方へ
「得意技」について考えようという流れからしてなんですが、まだ剣道を始めて1年も経っていない人は、得意技なんてまだ考えなくて大丈夫です。
得意技というのは、基本の技が身に付いてきて、試合を重ねる中で、自然と見えてくるものだからです。
試合や地稽古をたくさん重ねていくと、自分が繰り出す技が1本として決まる確率の高い技が出てきます。
その内自分でも意識して、それが自信をもって繰り出せる技となります。
それがあなたの得意技です。
得意技を稽古や自主練で磨くのも良いですが、1年もたっていないのに地稽古や練習試合でそれに固執したり、頼るようだと変な癖がついて後々伸びません。
自分の自信を持っている技が2~3しかないとそれが通用しない相手に出くわすとすぐ手詰まりになって最終的に負けてしまうからです。
技のバリエーションを増やすことよりも基本の技を徹底的に稽古しましょう。
基本の技がしっかりできていればそれらの組み合わせで後は、中心を攻めること、間合い読むこと、機先を制することで、試合に勝てます。
■中心を攻める
高段者は、頭のてっぺんから両足の間までを結ぶ正中線と言われる中心の奪い合いをとても重視します。
例えば両者同時に面を打つことを「相面」と言いますが、こちらが中心を奪っていればこちらの面が相手の面にしっかり当たり、こちらの1本が決まります。
常にこちらが中心を奪っていれば相手の技は常に中途半端になり、タイミングも後手後手に回らざるえなくなるためです。
それを実感したのが、高校生の時一度、九州からきた猛者と地稽古した時です。
私の剣先を無視するかのよう竹刀を中心に置いたまま近間にずずいっと入ってきて、竹刀を交差した状態で平気な顔をしているのです。
「なんだこいつ・・(汗;)」
私は関東でこんな事する人がいなかったのであせりました。
ちょっとムッときて、面にしろ小手にしろ打ち込むのですが、竹刀でぐぐぃっとこちらの竹刀をいなされて、全然こちらの技が当たりません。
しかも近間だからよけいに打ちにくいんです。
そしてこちらが動揺してあせっている隙をついて、中心からどかんと面、引き面、引き胴とやられ放題でした。。
この時初めて中心を奪うとはどういうことか知ることができました。
■間合い読む
膂力、脚力があってスピードのある方が、一足一刀の間合いでお互い相対したとしても、同時に打てば先に当たりますし、遠間から打つことができます。
相手から1本とれる間を「打ち間」と呼びますが、この相手が1本をとるために打てる間合い(簡単に言えば距離)とこちらの「打ち間」を読まないで、何も考えずに気合いだけで試合を進めると当然勝率は落ちます。
相手の試合を先に見ていれば、「あいつかなり遠間からでも打てるんだな・・」とか、「近間で打つのが得意なのか、つばぜり合いで注意しよう」などと事前に考え戦略を練れますが、そういう前情報なく戦うことの方が多いので、少し打ちあった中でどれだけそれを早く知覚できるかどうかがポイントです。
高齢の高段者は、経験の長さ、深さからこの間合いを読むことに非常に長けているので、スタミナなどの体力や力で勝っている若者と戦っても、、竹刀の操作とふくみ足や微妙な体さばきで、相手に気づかれずに間合いを詰めたり、ずらしたり、はずしたりして相手の技をかわし、こちらの打ち間に誘い込んで1本を奪います。
若くして相手との間合いを読むことに長けている人は、体が小さくても、うまく間合いを調整して相手の打つタイミングをずらして気勢を削いだり、遠間で安心している相手の気のゆるんだ瞬間にすすっと間合いを詰めて1本取ることもできます。
■機先を制する
「機先を制する」とは、相手より一瞬先に行動を起こして、1本決められる機会を奪うこと、また相手の攻めの計画、気勢をくじくことを言います。
例えば、「おりゃーーーー!!!」と相手がビビるような気合いをぶちかまして、相手が気後れした一瞬の隙に面や小手を決めることもできます。
剣道をしたことがない人は「打つ前から声めちゃ張り上げてるけど、あの気合い意味あんの?」とか言いますが、あるんですねー(笑)。
また例えば「小手面」「小手面胴」「面面」、体当たりしてまた「引き面」など相手に息着く暇も与えない連続技を仕掛けて、相手が防戦一方になった時に、さらに怒涛の連続を技を仕掛け、つばぜり合いの時に、相手が疲れて反応がにぶくなってきた瞬間、「引き胴」などを決める体力のある選手なんかもいます。
よくあるのが、「一足一刀の間合いで竹刀をカチャカチャ当てている瞬間から相手が打ちに行こうかという雰囲気を見せた瞬間に竹刀をバンと払って決める気合いの入った払い小手や払い面でしょうか。
決められた方は、こちらが技を出そうと思ったところをくじかれ「うおぃっ!(そうきたかっ、汗;)」という感じでまさにやられたー!って思いでいっぱいです(笑)。
なかなか初心者の人にはイメージできないと思いますので、次の試合動画を見てください。
「中心を攻めること」「間合い読むこと」「機先を制する」ということが超ハイレベルでできるトップ選手同士が戦うとこうなるという良い見本かと思います。
中心をがんとしてゆずらない者同士。一足一刀の間合い中で一瞬の気の緩みも許されない緊張感が伝わってきます。
そして最後、一瞬相手の気が緩んだ隙を見逃さず、機先を制した方が面を決めて勝ちます。
ほんのわずかな気の緩みが即負けにつながる、そんなハイレベルの戦いです。
技の発展段階について
私の経験上では、中段の構えから行う基本系から発展系への技のバリエーションは以下のラインナップになります。
これはあくまで私見なので、いやそれはむしろ基本に入るだろ?などなどあると思いますが、どうしても言いたい人はページ下のコメント欄からご意見ください(笑)。
▼基本的な「仕掛け技」バリエーション
一足一刀の間合いからの面、または小手、胴
引き面、引き小手、引き胴
二段連続攻撃の小手面、小手胴
仕掛け技でもそこからだんだんと以下のような技に発展します。
▼少し難しい「仕掛け技」バリエーション
遠間からの飛び込み面
出ばな面、出ばな小手
払い面、払い小手、払い胴
三段攻撃の小手、面、胴。または小手、面、面
そこからさらに高度な「応じ技」に発展します。
▼もう少し高度な「応じ技」バリエーション
小手抜き面、面抜き胴
面すり上げ面、小手すり上げ面
▼さらに高度な「仕掛け技」「応じ技」バリエーション
遠間からの飛び込み胴
遠間からの片手面
担ぎ面、担ぎ胴
面返し胴
引きながらの逆胴
諸手突き、片手突き
▼超高度な技(これできる人は相当ハイベルでごく一部)
面打ち落とし面(別名切り落とし)
巻き技
剣道経験1年以上の方へ
ここからは、剣道を6年やってみて、得意技を仕掛ける中でわかったことです。
例えば私(管理人)の得意技
あなたの得意技は何ですか?
私の高校時代の得意技ナンバー1は「面抜き胴」でした。
高校二年生の時は、これが三年の先輩たちにも面白いように決まり、いまでも決めた時の気分の良いイメージや感触が胸の奥に残っているほどです。
相手が面を打ち込んでくるとほぼ同時に、こちらも胴に飛び込むので、レギュラー以外の先輩はかわせなくて爽快でした。
しかし、レギュラーの先輩の中でも1番目から3番目までに強い先輩方にはなかなか技自体を出せなかったり、出しても通用しませんでした。
振り抜く瞬間に竹刀をお腹に抱え込まれてしまったり、胴を打って横をすりぬけようとしてもすりぬけようとするのと同じタイミングで素早く体を反転して追いかける形ですぐ面を打ってきて残心をつけさせてくれなかったり・・。
体さばきの反応速度が県大会ベスト16以上の実力の相手だともうなかなか通用せず、ベスト8以上の実力の選手にはまったく通用しなかったので、絶妙のタイミングで決まったと思った後に、先述のような形で技をつぶされるとかなりショックでした。
他の得意技は、出小手と遠間からの飛び込み面だったでしょうか。
得意技に磨きをかけよう
剣道をしていて練習試合や地稽古の経験が増えてくると、自分が1本取れる確率の高い技が出てきて、その技に自信が持てるようになってきます。
その技をさらにレベルアップして確実に決められるようさらに磨きをかけましょう。
例えば、その技をどんな相手からでも確実に決められるようにするため以下の流れの試行錯誤をお勧めします。
・地稽古で戦う全ての相手に対して1本決められるまで数日間何度か試す。そしてどんな場面なら決めやすいか、どんな相手には決まらないか見極めておく
・上記の経験を元に、決まらない相手に決めるためにはどうしたらよいか考えた結果を元に考えた訓練法で自主練を毎日行う。
■参考例
<得意技が気持ち遠間からの飛び込み面だった場合>
地稽古でわかったこと ⇒ 相手の方がリーチがあるとなかなか決まらない
↓ 以下の訓練法を試してみる
・左足だけの片足跳躍素振りを毎日相当数行う
・寝る前にスクワットを毎日50~100回やって脚力をつける
・昼休みに道場にそっと入って打ち込み台にいつもよりさらに遠間から1足で打てる練習をする
こんな感じで技の成功確率をあげていきましょう。
得意技を仕掛ける中でわかったこと
全ての技を万遍なく稽古するのは当然ですし、自信のある得意技を持つのはとても良いことですが、注意したいのが、その技を意識し過ぎて、今日はこの技で絶対決めてやる!などとあまり変にこだわり過ぎてしまうと、だんだん試合では負けることが多くなるのも自分の経験でわかったことです。
特に出小手と抜き胴しか確実に1本取れる自信がなかった頃、そういう状態(スランプ)に落ちいりました。
特に出小手などは、意識的に出小手を打てるよう相手を誘うより、試合の流れの中で無意識に出した時の方が綺麗に1本決まることが多かったように思います。
相手がこうきたら、こう。次に相手がこうきたらこうと自分なりの方針と戦略をもって試合を進めることは無論必要なことで大事です。
が、理想としては、最終的に心は常に闘志をたぎらせつつ平常心で、どんな相手の動きにも柔軟に対応できるよう体が無意識に反応して技が繰り出されるぐらい稽古を積むのことが大切なのだと思います。
達人は「後の先」と言われる境地に達しているのはそういうことかと。
県大会トップレベル以上の選手と試合をすると、こちらがふっと先に動いた(機先を制して面に飛び込んだ!)瞬間、のど元に強烈な突きをくらってたりします。
全然打つ気配がなかったのにもかかわらず!!
その後もこちらが主導権を握ろうとやっきになって打ち込もうと軽くいなされ、ゆうゆうと「面をかわされた!?」と思った瞬間にもう胴を抜かれてたりします。
全国上位レベルの選手の動画をたくさん見よう
「後の先」についてですが全国上位レベルの選手の試合をでYoutube見てると本当にそう思います。
例えば梅ケ谷選手は実に多彩で豊富な技の数々を見せてくれます。
県大会などでは見たこともないような相手の一瞬の隙をついて、繰り出される意外な技も少なくありません。
相手が打ち込んだ!と思った刹那、正面から近間に入り逆胴を打ちぬいているとか・・。(4分15秒)
ちなみに正面から逆胴打ちぬいて1本決めるのは、かなり実力差がないと決まりません。
特に、何度か出てくる突き技など見事なもので、いきなり突いたように見えますが、おそらく突こうとあらかじめ考えているのではなく相手の気がゆるんでいる箇所、警戒していない箇所が見えた瞬間に自然と突いているのでしょう。
突きはよほど相手との実力差や油断してくれてないと、最初からこちらが突こうとして決まる技ではありませんから。
突ける隙、タイミングが見えたと感じた瞬間もう全力で突いていないと決まりません。
0コンマでも躊躇すればもう機を逸してしまうのが突きが決まるタイミング。
彼は普段から突き技も十分稽古しているのでしょう。
全国レベルの選手は皆、高度な突きが自由に使えると思いますが、それでも全国レベル同士で闘うとなると見事な1本が決まる瞬間を見れる機会は少ないと思います。
ぜひYoutubeで見まくって己の糧にしてください。
この動画もう見たよ!って人たくさんいると思いますが、何度でもみてください!特に小柄だけど自分より大きい奴よりもずっと強くなりたい人は!
自分が会得したい技の部分でもいいです。
ミラーニューロン
人間には「ミラーニューロン」という神経細胞があると言われてます。
他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動をとっているかのように”鏡”のような反応をすることから名付けられた細胞です。
例えば日本がサッカーのワールドカップに初めて出場してからというもの連続してワールドカップに出場できています。
なぜだと思いますか?
それまでは日本のワールドカップ出場なんて夢のまた夢だったんですよ。
それはつまり日本中のサッカー小僧たちが、世界レベルのサッカーをテレビで目の当たりにし、日本人である俺たちもワールドカップに出れるぐらい上手くなれるんだ!と脳が無意識に感じたからです。
そしてそう感じた、信じた子供たちが本気でテレビでトップ選手たちの映像を見て真似しだしたのです。練習の中で脳裏に描きながら。
そうして昔(30年前)だったら天才じゃね?と言われるぐらいのレベルの子供たちがバンバン出現し始めたんです。
その証拠に上のYoutube動画のコメント欄に
「この動画毎日見てたら「引き面」ばこばこ入るようになった 笑」
ってコメントつけている人がいます。
だから内村選手でも竹之内選手でも誰でもいいので、自分の好きな選手の動画を自分もそれができると信じて何回も何回も見まくってください!そして稽古でその人に成りきって技を繰り返し繰り出してみてください。
確実に上達するはずです!
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