剣道部の防具は高い
さて、4月と入学シーズンが近いづいてまいりましたので、めでたく剣道部に入ろうと決めた人に向けて、1つお伝えしたいことがあります。
初めて剣道を始めようという人に、期待と不安の膨れ上がる一番大きな問題としてぶちあたるのが、防具の購入についてですね。
家計の苦しい保護者の方(お父さん、お母さん)にしてみれば、剣道の防具は、大きな負担です。
私も中学時代、剣道部に入り、まずぶち当たったのはこの問題でした。
もしこの記事を読んでいるのが、防具を使用するのがあなたであれば保護者である親御さんに見せてあげてください。
防具購入騒動
剣道部に入ると言うと、海上自衛隊に勤める親父は、
「剣道は良い! 大変良い。しかし・・、」
「防具なんて高いもの買えん!他の部じゃダメなのか?!」
親父は半ば怒ってそう言い放ちました。
とはいえ、元々サッカー部を考えていた私に対して、剣道部への入部は元々母親が言いだしっぺで、お勧めされたからというのもあり、母親が調整役になってくれ、両親の間でどうするか数日の間、検討されました。
今と違って30年前は安くて質の良い防具なんて全くなかったんです。
自衛官である父は私が大学に入る頃はかなり昇進して、母親も保険の外交員をしたりしていたので家の家計はなんとかなっていたのですが、私が中学1年の頃は、妹が下にいましたし、兄貴が高校入学を控えている時期でしたから、本当に家計は苦しかったようです。
自分も近所の友達2~3人といっしょに中学で剣道を始めることを決めてましたから、私だけ防具が買えないからという理由だけで、いまさら断念したくありませんでした。
すると両親が知り合いに聞いて回った末、父親の知人から剣道をやらなくなった子供の防具を譲ってくれるという朗報が届きました。
その際タダだったのか、謝礼を少し払ったのかは記憶にありませんが、とりあえずこれで剣道がやれそうだとホッとしました。
そして、ある日届いたその防具を「よかったな!さっそくつけてみろ!」と笑顔で私に命じる親父。
今思うと、「よかったのは、(高い金払わずに済んだ)あんただろ!」とつっこみたくなります(笑)。
だってつけてみてすぐ思ったのは、
「何これ・・・?(汗;)」
って感じ。
見た目もかなりくたびれて藍色も落ち気味でところどころ擦り切れてましたし・・。
なんか甲手は使いこんであるせいなのか元からなのかわかりませんがちょうど打たれる手首のガード部分が、ぺにょぺにょして柔らかいし、こぶしの手の平の皮の部分は固くなってしまっていて竹刀がすごく握りにくい。
下の写真の手の平の皮の部分がイメージに近いです。他はそれほど色落ちはしてなくてここまでボロボロではありませんでしたが。
他に面や垂れもなんか妙に柔らかくて、面はかぶっみてもなんかサイズが合っていないような感じでしっくりこない・・。
胴はまぁ問題ないか・・というぐらい。
正直、期待はずれもいいところで、喜べませんでしたね。
そんな不満げで、「なんかサイズ合ってないような気がするんだけど・・」とかぶつぶつ言っている私を見て、親父は怒り、
「ぜいたく言うな!これで我慢しろ!!」
と一喝。
しぶしぶそれで剣道をすることに・・。
(今思い起こすとなんてかわいそうな私・・・(^_^ ;)。自分の過去をかわいそうなんて思ったこと、どんだけみじめな時代でもいまだかつてありませんでしたが、いやマジで今思い出すと自分の子供だったらと思ったら胸が痛むほど・・・。その理由はこの後わかります(笑))
打たれるとめっちゃ痛い!
中学の剣道部に入って最初の数週間は防具をつけることもなく、素振りや足さばきなど、基本的な動作で済んでいたからよかったのですが、いざ防具をつけて打ち込みの練習になって気づいたこと。
それは、
面と甲手を打たれるとめっちゃ痛い!
防具が使い込んで古いせいだからだけじゃなく、元から品質もよくなかったんでしょう。
ペラペラだから強い力で打たれるとめっちゃくちゃ痛かったんです。
あと面がやはりサイズが合っていないせいで稽古中ずっとつけていると頭が痛くなってきました。
それを家に帰って親父に言うと、こう言われました。
「まだ防具が体になじんでいないからだ。つけていれば体になじんできて、体も慣れてくる!」
これですよ(笑)
「でも打たれると防具がやわらかくて薄いから、めっちゃ痛いんだよ!」
と言うと、
「もらった子もこれでずっと剣道やってたんだ。これが普通だ。その内慣れる!打たれて痛いなら打たれないようにしろ!」
今思うとすごいこと言ってますね(汗;)。
(だいぶ後で知ったのですが、その子は小学生だったらしく小学生用の防具じゃそりゃ痛いの当たり前です・・・)
「いや、元立ちと言って、練習で打たれ役もするんだから、打たれないようにできるわけないじゃんか!」
とか反論するとブチ切れて、
「だったらやめて他の部にしろ!」
「・・・・・。」←私 (「エヴァ0号機、完全に沈黙しました」状態)
もうしょうがないから、頭痛と打突時の激しい痛みに耐えながら剣道部での稽古を続けてました。
面の方は頭と顔に合うように顎のところに折り畳んだ手ぬぐいを一つ入れ、打たれると痛い頭頂部にも折り畳んだ手ぬぐいをもう1枚入れてみたりして、涙ぐましい努力をしてましたね。
小手はひたすら痛いのを耐えてました。
結果
数か月後、どうなったかと言いますと・・。
確かに三か月ぐらいしたらだいぶ慣れました(笑)。
人間の適応能力はすごいもんですね。
面の頭頂部分は、打ちの強い奴に打たれるとやっぱり痛いので相変わらず折り畳んだ手ぬぐいを入れてましたが、面のしっくりこなかったことは気にならなくなり、頭痛もなくなりましたし、甲手も打たれる手首の部分が、痛みに耐えられるように体の方が強くなりました。
面の頭頂部分に入れていた折り畳んだ手ぬぐいも二年生になる頃にはもうしてませんでした。
体全体が鍛えられて強くなっていたのか痛みに慣れたか・・、おそらく両方でしょう。
そう考えると本当に人間の体ってすごいものです。。
どうやら打たれ続けると、本当にその痛みに耐えられるように体が強くなるようです。
ただこれは体の成長の速い成長期だったおかげもあると思いますが・・。
しかし、甲手だけは、手の平の内側の皮の部分が固いせいで、竹刀を握って繊細な剣道の技自体上手くできなかったため、まずは半年後ぐらいに手の平の皮の部分を新品に貼りかえる補修をしてもらいました。
するとめちゃくちゃ技が出しやすくなり、稽古するのが楽しくなったほどです。
さらに1年後は、甲手自体がもうボロボロになったので新品を買ってもらったのですが、
「なんだこりゃ?すげぇやりやすい!」
と感動するほど剣道の技が出しやすくなり、打たれてもほとんど痛くなかったので、あんなひどい小手を使っていたのが本当に馬鹿みたいに思えましたね。
あんなに我慢せず、もっとさっさと甲手だけは新しいものを買ってもらえばよかったと・・・。
甲手は面、胴、垂れよりも一番値段が安くて、技を出すにも受けるにも上達に影響がある部分だったんです。
だから面と甲手だけは中古はやめて品質の良いものにしないと剣道が上達しないまま嫌な思いだけ残してやめるはめになるかもしれません。
無理しても良い品質の自分の体にあったものを親に頼み込んで買ってもらうようにしましょう。
↓こんな感じの良いモノ
(親御さんは面と甲手だけはできるだけがんばって新品を買ってあげてください。面はまだサイズがあえばいいかもしれませんが特に甲手だけは本当に! でないと子供は剣道続けてもろくな成績も残せないまま部活終了となるかもしれません)
高校生になった時のこと
中学時代は、あのひどい防具で三年間我慢できましたが、高校生になったらさすがに体もでかくなり、防具も本当にボロボロになっていたので、新しく買うしかなくなりました。
この時はさすがに親父も「新しい防具を買ってやらんとな・・」と笑顔で言ってました。
中学時代三年間部活を休まずやりぬきましたし、自宅でも素振りやってたりとがんばってましたからね。
地区大会でも団体戦にレギュラーで出場し、優勝したりもしましたし。
そしてその時買ってもらった防具のうれしかったこと。
武道具店に休日連れていってもらい、なんと親父が「好きなもの選べ!」とかいうわけです。
「つっても高すぎるものはもちろん買えないけどな・・」と(笑)。
それで当時いくらだったかもう忘れましたが、それでも当時でも面、小手、垂れ、胴と全部合わせて7~12万円ぐらいはしたんじゃないでしょうか。
面の突き垂れ部分と胴の胸部分に亀甲飾りのあるすごくかっこよくて、質の高いものを買ってもらいました。
うれしかったですね。
家に帰ってさっそく道着、袴と合わせてつけてみて思いました。
「超カッケーーーー!!」
防具つけたまま寝ようか、このまま学校行こうかと思ったほどです(笑)。
寝るときは防具を入れた防具袋を枕の近くにおいて寝たほどです。
ただ親父もこの高い防具の購入には少し無理したらしく、夕食の時、
「あんな高いもん買ったんだから、途中で辞めたら許さんぞ!(さらに、金返してもらうぞとまで)」
とめっちゃ怖い顔で言ってました。
まぁそんなこと言われずともお気に入りの防具で早く稽古がしたいと思うほどモチベーションはマックスでしたから、「三年間続けるに決まってるだろ!」という気持ちでした。
↓これがその時私の頭にあったその時のイメージです(笑)
もちろん高校三年間もきっちり夏の猛稽古にも耐え、無事卒業までやりきりました。
ちなみに実際その新しい防具を使ってどういう感触だったかと言いますと・・。
別世界でした。
前の防具はなんだったの?アレ、オモチャだったのか?と思うほど。
例えるなら、小僧寿しと立派な寿司屋で食べる寿司職人によって握られた本物の寿司との違いぐらい。
いくら強くどこ打たれても痛くないですし、自分が技を出すための必要な箇所は柔らかくなっているようで技も出しやすい。
もっといい防具使っていたらもっと試合で勝てたんじゃないかと本当に思いました。
でそのお気に入りの防具なのですが、品質が非常によかったこともあり、甲手はさすがに何度か修理しましたが、面、胴、垂れは全然問題なかったので、社会人になったらいつかやろうと高校を卒業してもずっと大事に保管してました。
しかしさすがに押し入れに入れっぱなしにしていたせいで、カビたりして、さらに社会人になって20年も経過したら相当古びてしまい、最終的に捨てるしかなくなってしまったのが今でも残念です。
今なら防具をまるごと洗って藍染めもしてくれて新品のように復活させてくれる業者さんがいくつもあるだけに・・。
剣道の防具購入についてアドバイス
以上のような私の経験から踏まえていくつかアドバイスです。
・中学生用で新品でも、面、甲手、胴、垂れと防具一式が「定価で3万円以下の場合」は要注意
あんまり安い防具は、やはり安全基準を守っていない可能性があるので要注意です。
私のように子供が痛がって、途中で剣道をやめてしまう可能性もありますし、下手すると怪我します。
実際私も慣れるまで手首、しばらく腫れてひどい時は内出血してましたから(泣)
・必ず子供の体のサイズにあった防具を選ぼう
胴や垂れは多少サイズが合わなくてもよほど太っていたり痩せていない限りは大丈夫ですが、面と甲手は、必須です。
面は頭に合わないと私のように頭痛がするようになりますし、面がずれた状態で稽古して打たれた拍子に頸椎を痛めたり、面が頭からはずれて倒れて頭を打ったりしたら重症。重大事故を招きかねません。
甲手もサイズが合わないと技がまったく上達しないですし、手元が狂って稽古相手に怪我を負わす可能性があるでしょう。
以上の点から、防具を購入する際は、しっかり身に着けてみて決定することが必須です。
今はネット時代ですから店頭で買わずともネットで買っても商品到着後7日以内など期間内であれば交換・返品に対応してくれますので、サイズがイマイチ合ってないけど仕方ないか・・なんて諦める必要は全然ありません。
以下に面や甲手など体のサイズの測り方があるので参考にしてみてください。
・高校生は、あまり安い防具はやめた方が良い。品質のしっかりした面、甲手、胴、垂れ一式合わせて5~10万円ぐらいのものが良いでしょう。
高校生は打突がもう成人並かそれ以上なので品質が悪いと冗談ではなく、大怪我しかねません。
私が仮にあの中古の中学時代の防具で高校生になっても続けて使って稽古していたとしたら、毎日全身に打撲傷、擦り傷が絶えなかったでしょう。
面を打たれては脳震盪、胴の胸部分を打たれては咳込み、甲手を打たれては毎回手首が腫れ上がるといった満身創痍の日々だったと思います。
それほど高校剣道というのは激しい打ち込みにさらされます。
・中古で買う場合は、剣道経験者(有段者)の人に使用に耐えうるか確認してもらう
今はヤフオクやジモティーで、中古でも品質の良いものを購入することが可能です。
ジモティーなどではとにかく持ち主も無料で処分したいからと取にいくだけでただで譲ってくれることがあります。
しかし中古の場合は誰もその品質を保証してくれません。
剣道経験の全くない方が、手に取って見た目もよいし大丈夫だろうと思うのは危険です。
例えば稽古中に、激しい打突によって、面につけてある面金と面布団の間に竹刀がめり込み、お子さんの顔に竹刀がつきささったらどうします?
先述した私の中古の防具ですが中学三年時にはかなりボロボロになり、中学卒業時に捨てるしかなかったので、捨てる時面の面金と言われる金属の部分と面布団の接合部分が思いっきり引っ張ったらはずれそうだなと思ったので、試しに本当に思いっきり引っ張ってみました。
すると、めりめり・・と音がした後、なんと本当にずっぽぬけました・・。
普通手でひっぱってぬけるなんて有り得ないんです。面は超強固に作ってあるので。
オレこんなやべーもん使ってたのか・・と額に汗がにじみました。。
だから中学時代の私は、今考えると事故がなかったのは本当に運がよかっただけ。
後悔先に立たずです。
そんなことはめったにないと多くの人が言うと思いますが、私だったら自分の子供の子がそんな事故に合う確率が1%でもあったらもう嫌ですね。
ネットで買ってしまったりジモティーで無料、または数千円でゆずってもらったとしても、子供が稽古に使う前に、剣道経験がしっかりある人に防具を見てもらい、子供が稽古使用に耐えうるか確認してもらってからにしましょう。
お子さんが初段に達していれば、自分でこの防具は大丈夫そうか手で触ってしっかり確認できると思います。
防具が必要なくなったら
品質の良い剣道の防具は、何年も使用に耐え得ります。
(どんな猛稽古をしても小手以外は3年まず持ちます。)
お子さんが卒業されて防具を処分する必要が出てきたら、知人でほしい人がいないのであれば、捨てるのももったいないですし、都内など処分にお金がかかるところも多いですから、以下のいずれかが良いでしょう。
・できるだけ布でふくなど綺麗にして、ジモティーで0円か数千円で欲しい人に引き取ってもらう
・防具専門のクリーニングに出して綺麗にしてヤフオクに出品する
では有意義な防具購入、処分プロセスに至らんことを祈っております。
※親御さんには、くれぐれもお子さんに私の中学時代のようなかわいそうな思いをさせないで、子供が思う存分稽古に励んでたくましく成長できるよう支援していただけることを切に祈ります。