今年フランスのオリンピックで、ブレイクダンスが新しい種目として追加されましたよね。ブレイクダンスもなかなか優劣をつけるのが難しい競技なのになぜでしょうか? 剣道なんて柔道よりも古い歴史を持ち、今や世界中に選手もおり、世界大会が開催されてからもうずいぶんとたっているというのにです。
剣道は、日本の伝統的な武道の一つであり、多くの愛好者がいます。しかし、剣道はオリンピックの正式種目にはなっていません。ここでは、日本の剣道がオリンピック種目にならない理由を10個あげてみました。
目次
1. 武道としての精神性の重視
剣道は単なるスポーツではなく、精神修養を重要視する武道です。礼儀や尊敬、精神統一といった価値観が根底にあり、勝敗だけでなく人間性の向上を目指しています。このような精神性を持つ剣道は、競技スポーツとしての枠に収めることが難しいのです。
剣道の精神性
剣道では試合前後の礼、試合中の礼儀作法が非常に重視されます。これらの礼儀作法は、単に形式的なものではなく、相手に対する敬意や自身の精神統一を意味しています。オリンピックのような大規模な国際競技大会では、このような精神性を完全に理解し、尊重することが難しいと言われています。
2. 統一されたルールの難しさ
剣道は世界中で行われていますが、国や地域によってルールや審判基準に微妙な違いがあります。オリンピック種目となるためには、全世界で統一されたルールが必要ですが、これを実現することが難しいのです。
ルールの違い
例えば、技の有効性やポイントの判断基準が異なる場合があります。日本国内でも流派や団体によって微妙な差異が存在し、これが国際的にさらに広がると、一貫したルール作りが困難になります。
3. 審判の主観性
剣道の試合は、審判の主観によって技の有効性が判断されます。技の美しさや正確さ、相手への気迫などが評価基準となるため、完全に客観的な判断が難しいのです。オリンピックのような厳密な競技環境では、これが大きな課題となります。
主観性の問題
剣道では、「気剣体一致」と呼ばれる概念が重要です。これは、技を出す際の気合い(精神力)、剣の使い方、体の動きが一体となることを意味します。しかし、これらを客観的に評価することは難しく、審判の経験や感覚に大きく依存します。この主観性が、オリンピック種目としての採用を難しくしています。
4. 防具と道具の特殊性
剣道では、防具や竹刀を使用しますが、これらの装備は非常に専門的で、他のスポーツに比べて高価であることが多いです。オリンピック種目として普及させるためには、多くの国や地域で簡単に入手できることが求められますが、現状では難しいのです。
装備のコストと普及
防具一式や竹刀は、品質の高いものを揃えるとかなりの費用がかかります。さらに、これらの装備を正しく使用するためには、専門的な指導が必要です。このため、剣道の普及が限定的になり、オリンピック種目としての普遍性に欠ける点が課題となっています。
5. 観戦の分かりにくさ
剣道の試合は、技の有効性やポイントの判断が難しく、観戦者にとって理解しにくい部分があります。オリンピックでは、観客が競技を楽しみ、理解しやすいことが重要視されるため、剣道の観戦の分かりにくさが問題となります。
試合の観戦ポイント
剣道の試合では、一瞬のうちに勝敗が決まることが多く、何が有効打突であったかを理解するのは初心者には難しいです。
観客が技の美しさや選手の技量を理解しやすくするための解説や教育が必要ですが、それを普及させるには時間と労力がかかります。
6. 国際的な普及の課題
剣道は日本国内で非常に盛んですが、国際的な普及度は他のスポーツに比べてまだ低いです。オリンピック種目として採用されるためには、世界中で広く認知され、愛好者が多いことが必要です。
国際連盟の役割
国際剣道連盟(FIK)は、剣道の普及と発展を目指して活動していますが、世界中での剣道人口を増やすためにはさらなる努力が必要です。特に、アフリカや中南米などの地域では、剣道の認知度が低く、普及が進んでいません。
7. 他の武道との競争
オリンピックには既に柔道や空手などの日本発祥の武道が採用されています。新たに剣道を加えるためには、これらの既存競技との競争が避けられません。
8. 武道の多様性と競争
柔道や空手は、既に多くの国で普及し、オリンピック種目として定着しています。これに対し、剣道が新たに採用されるためには、他の武道との差別化や独自の魅力を強調する必要がありますが、これも容易ではありません。
9.ロビー活動する人が少ない
ブレイクダンスという特殊な競技が今年のフランス大会から種目に加わったのは、いう間でもありませんがオリンピック種目にしたいと熱意をもってオリンピック委員会にロビー活動として強くプッシュしつづけた人たちがたくさんいたからに違いありません。つまりまだ剣道をオリンピック競技にしたいという熱意を持った人が少ないということが言えます。(特に全日本剣道連盟はオリンピック種目に加えることについては消極的と言われています)
10.日本が強すぎる
決定的な理由はこれでしょう。過去19回開催された世界剣道選手権大会では、ただの一度を除いてほとんど日本チームが優勝しています。日本人としてはうれしいですが、これではオリンピック競技とする事については難しいと言わざるを得ません。
まとめ
剣道がオリンピック種目にならない理由は、武道としての精神性、統一されたルールの難しさ、審判の主観性、防具と道具の特殊性、観戦の分かりにくさ、国際的な普及の課題、そして他の武道との競争など、複数の要因が絡み合っています。これらの課題を克服するためには、剣道コミュニティ全体の努力が必要です。
しかし、オリンピック種目にならなくても、剣道の価値や魅力は変わりません。剣道は、伝統と精神性を重んじる日本の文化として、これからも多くの人々に愛され続けるでしょう。
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